クトゥルフさんとの戯れ その3

GM 「舞台が神社にうつりました. 歩くことしばらく, ひっそりと神社が見えてきます. 手前に長い階段があり, 立ち入り禁止の札がありますがあまり意味はないでしょう」
羽川「人はいますか?」
GM 「本殿の戸は閉まっていますが鍵はかかっていません. 後ここには誰もいませんね. 本殿の入り口に『こけし納め』と書かれている紙がおかれて30体の通常のこけしが鎮座しています. ここで皆さん, 『目星』か『図書館』で判定をお願いします」
多田「成功です」
GM「まず祭壇の中に神主の書記、古めかしい書物、古めかしい書物に挟まれた紙の3つが目に入ります。神主の手記から行きましょう」

神主の手記
『病気が治らないところを見ると今年はもう越せないかもしれない.
とにかく私の一番の気がかりとなっている村まつりのことはしっかりと書き留めておく.
 太平洋戦争末期の坂井村では平崎より疎開してきた児童30人をあずかっていた.
あの頃は空襲が連日のように起きていた. 坂井村には空襲の手が及ばないと考えていたが,
近くで空襲がある際に, 児童たちを洞窟に疎開させていた.
 8月30日, 避難先だった洞窟が崩落.
 児童全員が生き埋めとなって村人総出で救出に向かったが最早手に負える状態ではなかった.
そして翌年8月30日に神かくしが起こった. 疎開児童と同じような年代の子供が全て神かくしにあってしまったのだ.
疎開児童がたたり神になってしまったと考えた当時の村長は先代に頼んでたたり神を鎮めるための儀式を依頼してきた.
この神社は水子の神社として用いられており, 子供を供養するための最適な手順が存在する.
供養するためのこけしは水樹の木で念入りに作られ, こけしの顔に涙のような彫りをすることから
『泣きこけし』と呼ばれていると先代はおっしゃっていた.

 終戦から60年以上たち当時事件に関わっていた人は大勢なくなってしまった.
30本もの泣きこけしを毎年供養場である神社に収め, 昨年収めたこけしを崖に流すという儀式もただの祭に形骸化してしまった.
幸いなことに儀式が村まつりに変化した後も神かくしは起こっていない. それでも村人たちは村に漂う危うい空気を感じているのか
産まれた子供を里子に出す習慣が定着してしまった.
 今年はこけし職人が一人になってしまったため, 30本の泣きこけしが用意できず, 普通のこけしを混ぜて祭を行うことになった.
とんでもない話だと思ったが泣きこけしを一人で何本も作るのは大変だし仕方ない. 私自身も病気で参加できないのだから,
あまり強く言うことも出来なかった. しかし泣きこけしを納め淵に流すという習慣も無くなってしまうのだろうか.

私は心配だ. 形骸かされたその儀式では効力もあてにならないだろう.
そのときたたり神はたたらないだろうか』

工藤「最適解は村人全員を説得して泣きこけし作成祭だったか!でももう時間がない」
八潮「これを書いたおっさんは何でこんなとこに残していったんだ・・・」
GM 「あと2つのものがあります. 古めかしい書物に対して『オカルト』か『考古学』でロールをお願いします」
あきんど「成功です」
八潮「あきんどすげー」
あきんど「考古学者志望ですから」
GM 「では, 20ページの書物に厄除けのこけし制作方法と呪文が記載されています. まずは, こけしに厄除けの効果を与える制作方法. 水樹の木を削る際に呪文を唱えあかしをつけることが条件になっています. 泣きこけしのことですね. そしてもう一つの呪文は水子に取り込まれたときに水子を払う効果を持つとわかります. ここまで読めたあなたはクトゥルフ神話技能を4%贈呈します(ここで呪文の紙を取り出す)」

呪文
『イエ=いあアキキかくぇこーる(以下略)』
みたいなのが大分続く気持ち悪い紙が提示される.

多田「ひー!見るんじゃなかった。これ見ちゃいけないなんかだった」
八潮「これ頼っちゃいけない神様に頼ってるよ!」
工藤「これが水子にとらわれたときに抜け出す呪文?」
GM 「取り込まれたときに水子を払うとしかわかりません」
八潮「今、取り込まれてんのかな俺ら」
あきんど「他の人に教えられますか?」
GM 「いけます」
あきんど「じゃあ他の人に教えます」
工藤「多田, 多田. これも祭りで歌わない?」
一同「笑」
多田「俺もちょうどそうしたかった所だ」
工藤「これ村全体を俺達救えるんじゃねーの」
八潮「作ったこけしを振り回しながら」
あきんど「では, 今まで値切りで稼いだお金を神社に奉納します」
八潮「全てがつながってきたw」

工藤「神社を家捜しします」
GM 「実際のところ大したものはありません. 適当に正方形の建物で, 中の方に仏像があり, 入り口付近に30体のこけしが並んでいます. 他に大したものはないです」
工藤「このこけしは何でしたっけ?」
GM「通常のこけし
羽川「そうか. 今年のこけしはもう納めてあるのか」
工藤「ああ, これが本当は泣きこけしになってるべきなのか」
八潮「去年の時点でダメだったってこと?」
工藤「この中に泣きこけしはない?」
GM 「1個もないです」
工藤「泣きこけしを流すことに意味はあるんですか?手記にはなんと?」
GM「たたり神にこけしを流すことで『今年はこれで勘弁してくだせぇ』と言えます」
工藤「所持した方がいいのか, 流した方がいいのかわかんないなぁ. 持ってたらそれをターゲットに来ちゃうかもしれない」
あきんど「俺は流した方がいいと思ってる」
工藤「流しても30体に満たないから, 『30体中6体は流された. だが24体は襲ってくるでごわす』みたいな展開になりそう」
八潮「そうそう. それでこっちには何も武器がないってなりそう」
羽川「今, 世界には何本あるの」
GM 「12本ですね」
羽川「じゃあ一人1個ずつ流して後は1個ずつ持てばいいんじゃない」
全員「おー!」
八潮「言いくるめで親父から巻き上げるか」
羽川「今から戻れば1個ずつぐらい作れるんじゃない. 生き残るのに全力かけるなら作るべきだよね」
八潮「前の神かくしは夜10時ぐらいだったから俺らの勝負する時間は10時ぐらいか」
羽川「流すのはいつぐらい?」
GM 「広場で祭をある程度やってから淵へ捨てに行きます」
八潮「もう俺ら取り込まれてるようなもんだから呪文を唱えてからいけばいいんじゃない」
工藤「その呪文, ノーリスクなんですかね?」
八潮「リスクあるように見えるんだよねw」
工藤「邪神を呼びだしそう」
八潮「頼っちゃいけないものに頼ってそう」
剛田「すごくSAN値減りそうだから唱えるならその瞬間を狙って唱えた方が」
工藤「その瞬間になってはたして唱えられるのかな」
八潮「取り込まれたってどの段階を指すんだろう・・・. もう幽霊は見てるしさ」
工藤「ロックオンされてことを指すのか, 物理的になにかされるのか・・・」

工藤「では, そろそろ村に戻りましょう. ライブは近い」
八潮「人類史上はじめて, 呪いにたいしてライブで挑むw」
八潮「この歌(呪文の紙を取り出す)を多田が歌ってくれるんで俺らはその歌を聞きながらこけしを作ろう」

ここでSAN値のルールチェックが入りました. SAN値が1時間以内に5以上減ったひとは一時的狂気に陥る可能性があります. また1時間以内に5分の1以上減ったひとは割と長い狂気に陥ります

GM 「広場に戻りました. 村はずれの広場でひっそりと行われている祭りをあなたたちは目撃することができます. 子供がいない祭りはどことなく寂しいです. 祭りを見ていると君たちの周りだけ霧が出てきました. 霧はねっとりと絡みつき不快感を覚えます. SANチェックお願いします」
剛田・羽川「失敗!」
八潮「多田さーん、歌でなんとかしてくださいよー」
GM 「かつて宿で見た霧の顔を思い出してください. 今度は気のせいではすみません. いくつもの顔が霧の中, ぼんやりと浮かんでは消えていきます. 能面のような真っ白の無表情な群れ. SANチェックをお願いします」
八潮・剛田「アウト!」
GM「では1D2のSAN値減少です. ずっと恐怖に耐える君達, 次第に霧が晴れていて気づくと村外れにある大きな淵に来ています」
全員「おおおっ!?」
多田「ライブできずか・・・」
GM 「耳元から複数の笑い声が聞こえます. それは淵の方から聞こえている気がしました. ふと淵の方を見て気づいてしまいます. 淵から何本も何本も真っ白な腕が浮き上がってくることに. そしてその腕にはいくつもの唇と眼が浮かんでいます. ではSANチェックお願いします」
GM 「失敗した方は1D4減少してください」
工藤「2減少」
剛田「4減少」
GM 「ねっとりとした霧にまとわりつかれた君たち. 遠くに子供たちの, 叫び声, 鳴き声, あらゆる声が混じってきます. そして淵からゆっくり, ゆっくり子供たちのスガタが現れた. しかしそのスガタは折り重なり混じり合い呻く肉の固まりとなって何もわかりません. 今その腕は君たちに向かって伸ばされてきました. 戦闘処理に入ります!」
八潮「やばいって!」
GM 「たたり神を見た皆さん、SANチェックをお願いします」
全員「失敗」
GM 「え、成功者なし?では失敗した方は1D10のSAN値減少お願いします」
羽川「8減少」 多田「5減少」 工藤「4減少」 八潮「4減少」 剛田「2減少」 あきんど「これで合計8減少です」
GM「では皆さんアイデアロールお願いします. まず失敗した方は手を上げてください」
八潮・剛田「はーい」
GM「では, アイデアチェックに成功してしまった他の方々は, このたたり神がとても日常にふさわしくない恐ろしいものだとわかってしまいます. そうしてこのようなおぞましいたたり神を見てしまったあなたたちは一時的狂気に陥ります」
工藤「これアイディアチェックに失敗すべきだったのか・・・」

たたり神の登場により怒涛の勢いで心に傷を負っていくプレイヤー達. それぞれ以下の疾患を得ます.
工藤: 一時的な幻覚・あるいは妄想
あきんど: 早口で意味不明の会話
羽川:パニック状態で逃げ出す

そして・・・
GM 「多田さんはSAN値の5分の1以上減ってるので一時的狂気ではすみません. 長期の狂気に陥った. 制御不能の震え. 会話や文書で意思疎通不能になる」
八潮「歌でコミュニケーションだ!」
一同「笑」

あきんど「ぶつぶつぶつ」
工藤「見える・・・」
多田「ぷるぷるぷるぷる」
羽川「全力で逃げ出します」
GM 「(図を見せながら)逃げる先はこっちしかないね. 村側に逃げ出します. では行動できる他の方は素早さ順に行動します. たたり神は素早さは0です」
八潮「呪文を唱えます」
GM「わかりました。唱え終わるのは次のターンです。では多田さん」
多田「ぷるぷるぷるぷる」
GM 「わかりました. では工藤さん」
工藤「うーん, 泣きこけしを投げつけます『う、うわぁああ』」
GM 「祟り神は投げつけられた泣きこけしをいくつもある腕の一つで掴みとり, 内部に取り込みました. ではあきんどさん」
あきんど「多弁病で呪文唱えられますか?」
GM 「幸運の半分で成功したらOKとします」
あきんど「ファンブルです」
GM 「呪文を忘却してしまいます. 思い出すには紙を読むのに1ラウンドかかります」
剛田「呪文を唱えながらこけしを投げます. こけしを投げるのにクリティカル出ました」
GM 「では, 投げつけられたこけしをつかむのにたたり神は必死になり次の行動はありません」
全員「やったー!」

GM 「では、皆さん次のラウンドお願いします」
八潮「呪文が唱え終わりました」
GM 「残念なんの効果も発揮されません」
工藤「取り込まれたって状態にはまだ陥ってないのかも知れない」
GM 「次工藤さんお願いします」
工藤「僕は羽川の後を追いかけます『うわぁぁあ』」
八潮「屑w」
多田「混乱してきょろきょろしてます」
GM 「はーい. 次あきんど」
あきんど「呪文忘れてるので書物を読みなおして思い出します」
剛田「こっちも呪文を唱え終わりました」
GM 「何も起こりません. ではたたり神のターン. 位置が遠い羽川さんと工藤さんは狙いません. あきんどを襲います. 神々の攻撃『たたり』が行われます. 真っ白な腕が手にもった泣きごけしに掴みかかります」
あきんど「対抗します」
GM 「100%失敗ですw. こけしは取り込まれてしまいました」
八潮「こけしで多田を殴って『お前には歌があるだろう!』と言います」
一同「笑」
GM 「こぶし技能で1D3振ってください」
八潮「1点ダメージです」
GM 「殴られた多田さんは・・・. 痛かったですねw」
多田「ふざけんなw」
あきんど「何しようかな」
工藤「心理学であいつの考え読んでよ」
八潮「それやばいアプローチだろw」
多田「成功しちゃったらクトゥルフ力どれだけあがるのw」
あきんど「こけし持ってないんで次こられたら・・・. くそっ, 使える能力がねぇ. 逃げます・・・」
GM 「では、次剛田さん」
剛田「多田さんこけし持ってる?」
多田「持ってるね」
剛田「それを強引に奪いに行きます」
多田「もうなんか周りが敵にしか見えないw.抵抗します」
八潮「まさかのPvPがw」
(判定の結果、剛田が多田への組み付きに成功)
GM 「ここからこけしを奪い取るのは判定なしで出来ます. 窒息したりマウントポジションで殴りつけるのは判定がいります. どうしますか?」
工藤「一人の生贄がこけし何本分になるかって話ですよねw」
八潮「一人は一本なんじゃないw」
剛田「では, 組み付いて多田を引きずって逃げます(クリティカルで成功)」
羽川「おおっ!?」
GM「はい, 逃げました」
八潮「えっ, じゃあ俺が最前線w」

2ターン目終了. この時点で全力ダッシュの羽川, それを追う工藤, そこに剛田と多田が続くという状況です. 八潮はたたり神の前で一人立ちつくしています.

GM 「全員回りましたね? たたり神は八潮のこけしを奪っていきます. ではあなたがたのターンです」
八潮「逃げますw. 引きずってるあいつよりも速く!」
GM 「先頭の羽川はそろそろ広場に到着します. さて, では全員逃げ続けるだけですね. たたり神のターンです. 一番近い八潮を取り込みます. たたり神となった子供たち, 彼らの全てが君に助けを求めてきます. それは常人には耐え難い苦痛でした. SANチェックをお願いします」
八潮「成功です」
GM「おめでとう. 1点ダメージです. 次はそちらのターンです」
八潮「呪文を唱えます」
GM 「逃げてる人たちは逃げ続けるでいいですか?」
剛田「あっ、こっそりこけしを奪い取りたいんですけど」
工藤「取らなくていいんじゃない? 多田がもう持ち物扱いだし」
多田「こけしと人で自機が二つw」
剛田「じゃあいいです」
GM 「では呪文を唱え終わりました. そうするとたたり神はその身を大きく震わせ, そのスガタを徐々に徐々に消していきます. 怨念は浄化されました」
一同「ええっ」
GM 「いくつもの波紋があがりこの60年で奉納されてきて1000本以上の泣きこけしが浮かび上がってきます. あまりにも多すぎるその光景は君たちの心身に激しい衝撃を与えるに充分でした. SANチェックをお願いします」
多田「失敗」
GM 「1D3引いてください」
羽川「これで終わり?」
GM 「はい, 八潮さんの素晴らしい呪文によりたたりは消えました」
多田「八潮さんあざーっす」
八潮「錯乱した仲間を殴って逃し、俺が足止めして浄化した感じw」

〜エピローグ〜
GM「君たちは夏の奇妙な体験をしました. 君たちが懸命に話せば話すほど周囲の人は真面目に受け取って合ってくれません. でもあの出来事が現実にあったとはっきり確信できます. なぜなら, 坂井村で作った泣きこけしを淵で失っていたからです. その後, 坂井村は完全な廃村になりました・・・. 泣きこけしはただのこけしに戻りました」

あきんど「俺がレポートを書きます. 技能レベル超高いんで優秀なレポートになると思います」
多田「この呪文もつけとこうw」

感想

あらためて録音を聞き返してみると笑いの絶えない楽しいTRPGとなった.
ロールプレイにはまだまだ難があるもののもう少しやってみたい.
このように書き起こすとGMの努力の跡が見て取れるのも面白かった.